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大蔵省の創設と財務省への改組――明治維新から中央省庁再編まで

日本の財務省(旧・大蔵省)は、明治維新期(1868年前後)に誕生し、以後の政府機構の変遷を経て2001年に「財務省」に改組されました。ここでは、

  1. 明治初期の大蔵省創設(1869年前後)
  2. 2001年の中央省庁再編による財務省への改組

の2つの時期を中心に、「設立(創設)に深く関わった政治家・要人」についてご紹介します。


1. 明治初期の大蔵省創設(1869年前後)

背景

  • 1868年(明治元年)の明治維新後、新政府は欧米をモデルとした近代国家制度の確立を目指し、1869年(明治2年)に「太政官制(だじょうかんせい)」を導入。複数の省を設置する中で「大蔵省」が誕生しました。
  • 当時の新政府では、「誰か一人が創設した」というよりも、薩長土肥など各藩出身の志士・政治家たちが協議しながら政府組織や財政制度を整備していった経緯があります。

関連した主な政治家・要人

  1. 大久保利通(おおくぼ としみち)
    • 薩摩藩(現・鹿児島県)出身。維新政府の中心的人物で内務省を創設したほか、財政・税制の基盤づくりにも関わりました。
    • 短期間ながら「大蔵卿(後の大蔵大臣に相当)」を務め、地租改正など近代税制の導入にも影響を与えました。
  2. 大隈重信(おおくま しげのぶ)
    • 肥前藩(現・佐賀県)出身。明治政府で「大蔵卿」や「大蔵大輔」などを歴任し、財政・貨幣制度の整備を推進。
    • 後に立憲改進党を結成し、首相を2度務めるなど、政治家・改革者として有名です。
  3. 井上馨(いのうえ かおる)
    • 長州藩(現・山口県)出身。財政・租税政策に深く関与し、明治政府の欧化政策などにも携わりました。
    • 幕末期にイギリスへ留学して近代的な金融・銀行制度に触れ、その知見を日本の財政行政に取り入れようとしました。
  4. 渋沢栄一(しぶさわ えいいち) ※官僚・実業家として
    • 幕臣出身。直接「政治家」ではありませんが、明治政府の大蔵省に出仕後、日本最初の銀行制度(国立銀行)の設立や民間企業の創設などに尽力。
    • 大蔵省創設初期の実務面を支え、近代的金融制度・企業制度の基礎を築いたことで知られます。
  5. 木戸孝允(きど たかよし)・西郷隆盛(さいごう たかもり) など
    • 財政専門というよりは新政府全体の制度設計や政策決定に関わっていましたが、大蔵省を含む官制整備の背景には彼らの政治的な主導力があります。

ポイント: 明治初期の大蔵省は、「西洋式の財政機構をいち早く導入しよう」とする維新政府の総意の下で誕生したものであり、当時の主要政治家たちがそれぞれ役割を分担しながら創設・運営に携わりました。


2. 2001年の中央省庁再編による財務省への改組

背景

  • 1990年代後半~2000年代初頭にかけ、行財政改革(いわゆる「橋本行革」など)が進められ、政府組織をスリム化・効率化しようとする動きが活発化。
  • 2001年(平成13年)1月6日、中央省庁再編により、「大蔵省」は「財務省」に改組されるとともに、一部業務(金融行政関連)は分離され、新設の「金融庁」に移管されました。

関連した主な政治家

  1. 橋本龍太郎(はしもと りゅうたろう)
    • 第82・83代内閣総理大臣(在任: 1996–1998)。
    • 「行政改革会議」を設置し、中央省庁再編を含む大規模な行政改革に着手。財務省設立(大蔵省の改組)の大きなきっかけをつくりました。
  2. 森喜朗(もり よしろう)
    • 第85・86代内閣総理大臣(在任: 2000–2001)。
    • 橋本行革の流れを受け継ぎ、2001年1月6日の中央省庁再編を実行に移した内閣。現行の「財務省」への改組が実施された時期に首相を務めました。
  3. 小泉純一郎(こいずみ じゅんいちろう)
    • 第87–89代内閣総理大臣(在任: 2001–2006)。
    • 再編直後に首相となり、「聖域なき構造改革」などとあわせ、財務省の組織運営を含む行政改革を推進。財務省は金融庁と役割分担を明確化しながら現在の形を整えていきました。

ポイント: 2001年の財務省への改組は、特定の一人が設立を主導したというより、橋本内閣で打ち出された行政改革の方針を森内閣~小泉内閣が引き継ぎ、国会審議を経て実現したという流れです。


まとめ

  • 1869年前後の大蔵省創設: 大久保利通・大隈重信・井上馨など明治維新の中心人物が財政制度を確立する過程で生まれた。「この人が単独で大蔵省を作った」というよりは、新政府の主要メンバーが総力を挙げて近代財政機構を立ち上げた。
  • 2001年の財務省改組: 1990年代の橋本行革に始まり、森喜朗内閣で実施された中央省庁再編の一環として「大蔵省」が「財務省」になった。橋本龍太郎、森喜朗、小泉純一郎といった歴代首相の下で、国会審議や政令改正が行われ、金融行政は金融庁へ分離されるなど組織再編が行われた。

こうした歴史的経緯から、明治維新期と2001年の再編期にそれぞれ関わった多くの政治家が「財務省(旧・大蔵省)の設立・改組」に影響を及ぼしたといえます。