はじめに
今回は、グループCの名車として知られる「ニッサン R92CP」のプラモデルをご紹介します。キットはハセガワの1/24スケールで、スポンサーは“YHP(Yokogawa Hewlett-Packard)”のカラーリング仕様。グループC最盛期の魅力を再現した名キットであり、迫力あるレーシングカーを存分に楽しめるアイテムです。
実車「R92CP」とは?
R92CPは、1992年の全日本スポーツプロトタイプカー耐久選手権(JSPC)に向けて開発された日産のワークス・グループCマシン。「VRH35Z」V8ツインターボエンジンを搭載し、最大で1,000PS近くも叩き出すと言われた驚異的なパワーが魅力でした。空力にもこだわったカーボンモノコックを採用し、高速サーキットで圧倒的なパフォーマンスを発揮。日本のレースシーンを代表するマシンとして、現在でも多くのファンを持つ名車です。
キット概要
メーカー&スケール
- メーカー: ハセガワ (Hasegawa)
- スケール: 1/24
- 品番: 20404
パッケージ&中身
- 外箱には実車の勇姿が描かれた美しいイラスト。白×ブルーを基調としたYHPカラーリングが目を引きます。
- パーツはシャシー、ボディ、内装関連、ウィンドウなど、各スプルーに分かれています。比較的パーツ数は多めですが、細かいパーツがしっかり再現されており、組み応えのある内容。
- デカールはYHPロゴや日産ロゴ、カーナンバー等が揃っており、発色も良好。クリアパーツは透明度が高く、ウィンドウ類もクリアに仕上げやすそうです。
モールド&ディテール
- ボディ表面のパネルラインはシャープな凹モールドで、スミ入れが映える作りになっています。
- コクピット内のシートやダッシュボード、ロールケージなども再現度が高く、ディテールアップのしがいがあります。
- エンジン再現パーツは省略されている部分もありますが、コクピットからエンジンルームにかけての配管やインテーク周りはある程度再現され、上級モデラーさんは追加工作でよりリアルに仕上げることも可能です。
製作のポイント
1. ボディの塗装と合わせ目処理
- このキットの一番の見せ場は、やはり白とブルーのコントラストが印象的なボディ塗装。発色を良くするためには、下地処理が重要です。
- 下地処理の手順例:
- パーティングラインや合わせ目を丁寧にペーパー掛け
- サーフェイサー(ホワイト系)を吹いて表面を確認
- カラー(白/ブルー)塗装を行い、必要に応じてクリアコートで艶出し
- 文字やラインの境目はデカールで再現する部分が大きいですが、ブルーの塗り分けをデカールに頼るか、マスキングで塗り分けるかは好みで調整しましょう。デカールを使用する場合はしっかりクリアで保護し、段差を少なくするのがおすすめです。
2. デカール貼りのコツ
- 大判のYHPロゴやブルーのライン部分は曲面にかかるため、やや貼りにくい箇所があります。デカール軟化剤(マークソフターやマークセッターなど)を併用すると、しっかり密着させやすいです。
- 気泡が入らないように綿棒やデカールスキージーを使って余分な水分や空気を押し出し、落ち着かせるように貼ると仕上がりがきれいになります。
3. 内装・シャシーの表現
- コクピット内部は狭いスペースにパーツが凝縮されているため、塗り分けにも一工夫。シートの質感やベルト表現など、細部を塗り分けると一気にリアル感が増します。
- レース車両らしいロールケージやメーター類のディテールアップに、エッチングパーツやファブリックシートベルトなどのアフターパーツを使うのも面白いです。
4. 最終仕上げ
- シャシーとボディを組み合わせる際、合わせ目に注意しつつ位置をしっかり合わせます。
- クリアコートまで終わったら、細部のスミ入れやウェザリングを施すかどうかはお好み次第。耐久レースらしい汚し塗装で雰囲気を出すのも良いですし、ピカピカのショールームコンディションに仕上げるのもまた一つの楽しみです。
完成後の印象
仕上がったR92CPは、低く構えたボディに大きなリアウイングが特徴的で、見るからに「速そう!」という迫力。ホイールやタイヤのサイズ感も相まって、グループCマシンらしい迫力のあるスタイリングが堪能できます。
YHPロゴの白×ブルーのカラーリングがサーキットを駆け抜けた往年の姿を思い起こさせ、飾っておくだけでも見栄えは抜群です。グループCファンの方、またはニッサンレーシング好きの方にとっては、コレクションに加える価値の高いキットといえるでしょう。
まとめ
ハセガワの1/24 YHP ニッサン R92CP (20404)は、
- グループCならではの迫力あるフォルム をしっかり再現。
- 丁寧なパーツ分割とシャープなモールド で、初心者から上級者まで楽しめる。
- YHPカラーの美しさ を堪能できるデカールが付属。デカール貼りが少し難しい部分もありますが、キレイに仕上がったときの満足度は高い。
実車の歴史的背景や、当時のレースシーンを思い浮かべながら製作できるのもプラモデルの醍醐味。ぜひチャレンジして、あの名車R92CPの雄姿を手元に再現してみてはいかがでしょうか。
ポイント:
- 白とブルーの発色を良くするための下地処理。
- 曲面デカール貼りに軟化剤を活用。
- コクピット内部の塗り分け&ディテールアップで完成度UP。
グループC黄金期を彩ったレジェンドカーを、あなたの手で蘇らせてみましょう!
実車のNISSAN R92CPの詳細
1. 開発の背景・概要
グループC時代の隆盛
R92CPは、1990年代初頭にFIA(国際自動車連盟)が規定していた「グループC」というスポーツプロトタイプカー規定に則って開発されたマシンです。グループCカーは、ル・マン24時間や世界スポーツカー選手権(WSC)、全日本スポーツプロトタイプカー耐久選手権(JSPC)などで活躍し、高いダウンフォースや先進的な空力設計、大出力ターボエンジンなどを特徴とするマシンが数多く生まれました。
日産の「CP」プロジェクト
日産は1980年代後半から「RxxCP」という名称のグループCカーを開発・参戦しており、「CP」は “C Project” の略とされています。R92CPは、「R91CP」の改良型として1992年シーズンに投入されました。R91CPから空力やエンジンなどをさらに進化させ、JSPC(全日本スポーツプロトタイプカー選手権)での勝利を狙うことを主目的としていました。
レギュレーション変遷とR92CP
当時、国際的にはWSC(世界スポーツカー選手権)におけるグループC規定が徐々にF1スタイルの3.5リッター自然吸気エンジンへ移行しており、ターボ車の規制が強まる動きがありました。しかし、日本国内のJSPCでは依然として大出力ターボエンジンを搭載可能なグループC規定で戦うことができたため、日産はR92CPの開発に集中することになりました。
2. エンジンとパワーユニット
VRH35Zエンジン
R92CPの心臓部となるのが、日産の「VRH」シリーズエンジンです。R91CPまでに搭載されたVRH35シリーズをさらに改良し、1992年仕様として “VRH35Z” が搭載されました。
- 排気量: 3,495cc(約3.5リッター)
- 形式: V型8気筒 DOHC ターボ(ツインターボ)
- 過給方式: KKK製ターボチャージャー × 2基(チューニングやチームによってIHI製が使われた例もある)
- 出力: 最高で約800~950PS(予選スペックでは1,000PS近いとも言われる)
- 最大トルク: 公称では70kgfm前後だが、ブーストアップ次第ではさらに大きなトルクが発揮可能
VRH35Zエンジンは軽量化や冷却効率の向上を図りつつ、過給圧を高めることで大出力化を実現しました。一方で、ターボラグ(加給の立ち上がりの遅れ)や熱対策、燃費管理などがチームにとって常に重要な課題でした。
3. シャシーと空力
カーボンモノコック
- R92CPはカーボンファイバー製のモノコックを採用しています。重量剛性比に優れたカーボンモノコックは、当時のグループCマシンの最先端技術でした。
- シャシーの開発はニスモと英国のローラ(Lola)やマーチ(March)など海外のコンストラクターとも協力関係があり、ノウハウを蓄積しながら進化。
サスペンション
- 前後ともプッシュロッド式のダブルウィッシュボーンを採用。車高変化がダウンフォースの変動に直結するため、サスペンションジオメトリーのセッティングはチームの機密事項ともいえる領域でした。
- ショックアブソーバーはOhlinsやショーワなど、さまざまなメーカーのものがテストされていました。
空力
- グループCカーは、ル・マン等のストレートを高速度域(350~370km/h超)で走行するため、ドラッグを抑えつつ適度なダウンフォースを得ることが求められました。
- フロントノーズは地面とのクリアランスを最適化して、フロントウィングと車体床下のグラウンドエフェクトによるダウンフォースを稼ぐ構造。
- コクピット後方には巨大なエンジンエアインテークが設けられ、ターボチャージャーへの給気を最大化。
- リアウィングは大型のシングルウィングが基本ですが、コース特性に合わせてフラップ角度やエンドプレート形状を調整し、高速サーキットではドラッグを抑え、ダウンフォースが必要な中速サーキットではウィング角を増やすといったセッティングが施されました。
4. トランスミッション・駆動系
- トランスミッション: 5速マニュアル(競技用で細部は改良されることが多い)
- クラッチ: カーボン製マルチプレートクラッチ
- 駆動方式: MR(ミドシップエンジン・後輪駆動)
大出力のターボエンジンと組み合わせるため、ギア比の最適化と強度確保が重要でした。レース距離やサーキットの特性に応じてギア比を変更し、耐久レースではギアボックスを守るためにも頻繁にオーバーホールが行われました。
5. スペック(代表値)
項目 | スペック |
---|---|
全長 | 約 4,800 mm 前後(仕様・レギュレーションで変動) |
全幅 | 2,000 mm |
全高 | 1,000 mm 前後(車高調整次第) |
ホイールベース | 約 2,750~2,800 mm |
車両重量 | 880 kg(グループC規定の最低重量) |
エンジン | VRH35Z V型8気筒ツインターボ |
排気量 | 3,495 cc |
最高出力 | 約 800~950PS(予選仕様では最大1,000PS近く) |
最大トルク | 約 70kgfm ~(ブースト次第) |
トランスミッション | 5速マニュアル |
最高速度 | サーキットにより350~370 km/h超 |
※上記数値は文献やチーム・仕様によって差異があるため、あくまで代表値・目安と考えてください。
6. レース戦績・トピックス
JSPC(全日本スポーツプロトタイプカー耐久選手権)
- 1992年シーズンはグループC規定としては日本国内での最後の年となり、NISSAN勢はR92CPを投入してシリーズ制覇を目指しました。
- トヨタやマツダと並ぶ国内のライバル勢力の中で、R92CPはVRH35Zエンジンの大出力と信頼性を活かし、富士スピードウェイを中心とした高速サーキットで高い戦闘力を発揮。
- 特に富士1000kmなどの長距離レースで、R92CPの大パワーを武器に優勝を複数回記録。国内スポーツプロトタイプの頂点に立ったマシンとして名を残しました。
ル・マンへの挑戦は?
- ル・マン24時間レースでは、日産はR90CKやR91CPなどで参戦していた実績はあるものの、R92CPとしてはワークス参戦の機会が限られました。
- 1992年のル・マンはFIAのエンジン規定が3.5リッター自然吸気エンジンへ移行しつつあったタイミングでもあり、ターボを搭載するR92CPは性能調整等の問題が大きく、本格的な海外参戦は行われませんでした。
イベントや走行展示
- グループCカテゴリーが廃止された後も、日産のヘリテージカーとしてイベント展示やデモ走行でR92CPが披露されることがあります。
- その際に聞ける咆哮感たっぷりのV8ツインターボサウンドは、ファンにとって非常に魅力的なものとなっています。
7. R92CPの意義・評価
- 日本グループC時代の集大成: トヨタのTS010やマツダの767/787系などと並び、日本メーカーによるグループC活動の最終期を飾る名車の一つとして知られています。
- エンジン技術の先端: 中でもVRH35Zは大出力かつ信頼性の高いターボユニットとして評価され、後の日産のV型エンジン技術にも活かされました。
- デザイン・空力: 曲線を活かしつつ非常に流麗でありながら、空力効率も突き詰めたスタイリングは、まさにグループCマシンらしい「美しさと機能美」を兼ね備えています。
8. まとめ
NISSAN R92CP RaceCar ’92は、
- グループC最盛期 に登場した日産のワークス・スポーツプロトタイプカーの最終進化形の一つ。
- VRH35Z V型8気筒ツインターボ エンジンの圧倒的なパワー(最大1,000PS近くとも)とモノコックの高い剛性・信頼性に支えられて、多くの優勝を獲得。
- 空力設計・シャシー技術・ターボテクノロジー など、当時の日本が誇る最先端のレースエンジニアリングが注ぎ込まれた名車。
- グループCカテゴリーが終焉を迎えつつあった時期に開発されたため、国際舞台での活躍の機会は限られたものの、日本国内では大きな成果を収め、日本モータースポーツ史に確かな足跡を残しました。
現在においても、ヒストリックカーイベントやゲーム作品(「グランツーリスモ」シリーズなど)でその名を目にすることが多く、迫力あるV8ツインターボ・サウンドと力強い走りは、多くのファンを魅了し続けています。R92CPは、まさに日本のグループC黄金期を象徴する1台と言えるでしょう。