梅毒(ばいどく)は、トレポネーマ・パリダム(Treponema pallidum) という細菌によって引き起こされる性感染症(STI)の一つです。かつては減少傾向にありましたが、近年、日本を含め世界的に感染者が増加しています。この記事では、梅毒の原因や症状、診断方法、治療、そして予防について詳しく解説します。

1. 梅毒の原因

梅毒は、感染者との性的接触(性行為、オーラルセックス、アナルセックス)を通じて感染します。また、感染者の妊婦が胎児に感染を伝える先天性梅毒のリスクもあります。

  • 主な感染経路
    • 性的接触(精液、膣分泌液、血液を介して)
    • 皮膚や粘膜の小さな傷から細菌が侵入
    • 母子感染(胎盤を通じて胎児に感染)

2. 梅毒の症状

梅毒は進行段階によって症状が変化します。

① 第一期梅毒(感染後3週間前後)

  • 感染部位(性器、口、肛門など)に**硬性下疳(こうせいげかん)**と呼ばれる硬いしこりや潰瘍ができる
  • しこりは痛みがなく、数週間で自然に消える

② 第二期梅毒(感染後数か月)

  • **発疹(バラ疹)**が体全体に現れる(特に手のひらや足の裏に出ることが多い)
  • 発熱、倦怠感、喉の痛み、リンパ節の腫れ
  • 症状は自然に消えるが、治ったわけではなく体内に細菌が残る

③ 潜伏梅毒(症状なしの期間)

  • 治療しないと数年間症状が出ないこともある
  • 体内で細菌が増殖し、次の第三期梅毒へ進行するリスクがある

④ 第三期梅毒(感染後数年~数十年)

  • 心臓や血管、脳、神経系にダメージを与える
  • **神経梅毒(麻痺や認知機能の低下)大動脈瘤(心血管系の異常)**など重篤な症状を引き起こす
  • 放置すると死に至ることもある

3. 梅毒の診断方法

梅毒は血液検査によって診断できます。
一般的に以下の2種類の検査が行われます。

  • スクリーニング検査(RPR法・TP抗体検査)
    • 梅毒感染の有無を調べる
  • 確定診断検査(FTA-ABS法など)
    • 梅毒の診断を確定する

※感染初期では陽性反応が出にくい場合があるため、医師の指示に従い再検査を受けることが重要です。

4. 梅毒の治療方法

梅毒はペニシリン系の抗生物質で治療可能です。
主に以下の治療が行われます。

  • 第一・二期梅毒ペニシリンG筋注 または アモキシシリン内服
  • 第三期・神経梅毒長期間のペニシリン投与

※治療中は性行為を控え、パートナーと一緒に検査・治療を受けることが大切です。

5. 梅毒の予防方法

梅毒の予防には、以下のポイントが重要です。

  • コンドームを正しく使用(ただし、完全に防ぐことはできない)
  • 不特定多数との性交渉を避ける
  • 定期的な性感染症検査を受ける
  • 感染の疑いがある場合は早めに医療機関を受診

6. 梅毒は完治する?

梅毒は早期発見・適切な治療を行えば完治可能です。ただし、治療が遅れると重篤な合併症を引き起こすため、早期の診断・治療が非常に重要です。


まとめ

梅毒は適切な治療を受ければ完治する性感染症ですが、放置すると重篤な合併症を引き起こす可能性があります。感染を防ぐためには予防策を講じること、定期的な検査を受けること、そして早期に治療を開始することが重要です。

近年、日本でも感染者が増加しているため、正しい知識を持ち、適切に対処することが大切です。少しでも気になる症状がある場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。