原発不明がんってどんな病気?
「がん」にはいろいろな種類がありますが、多くの場合は「どの臓器から始まったか」がわかります。たとえば「肺がん」「胃がん」「乳がん」といった具合ですね。ところが、検査をいくらしても、がんの最初の発生場所(原発巣)がわからないことがあります。これが**原発不明がん(Cancer of Unknown Primary:CUP)**と呼ばれる状態です。
どうして原発巣がわからないの?
がんを見つけるときには、通常、血液検査や画像検査(CT・MRI・PETなど)、内視鏡検査、病理検査など、さまざまな方法を使って「どこから始まったがんなのか」を探ります。
しかし原発不明がんの場合、こうした検査をしても原発巣が特定できないのです。もともとのがんの「本体」が小さかったり、治療や免疫などの影響で消えてしまったりして、転移して広がったがんだけが見つかることもあります。そのため、診断がとても難しくなります。
原発不明がんの特徴
- 診断時に転移が進んでいることが多い
原発巣が小さいまま転移してしまうケースが多いため、見つかったときにはすでに複数の場所に広がっていることがあります。 - 治療方針が立てにくい
ほとんどのがん治療は「がんがどの臓器から始まったか」を基準に薬や手術、放射線治療などを決めます。しかし原発不明がんは原発巣がわからないので、病理検査で判明するがん細胞のタイプや患者さんの体力、症状などを総合的に考えて治療法を決める必要があります。 - 遺伝子検査の進歩でわかるケースが増えてきた
最近は、がん細胞の遺伝子を詳しく調べる検査(ゲノム医療)が進んでおり、従来は「不明」だった原発巣を特定できる場合も増えてきました。原発巣が特定できなくても、遺伝子変異のタイプから効きそうな薬を選べるケースもあります。
治療はどうするの?
- 抗がん剤治療(化学療法)
がんのタイプ(腺がん・扁平上皮がん・神経内分泌腫瘍など)に応じて、複数の抗がん剤を組み合わせる治療が行われます。 - 放射線治療
もし転移が限られた部位にとどまっていたり、痛みを和らげるなどの目的があったりするときは、放射線治療が検討されることがあります。 - 手術
転移巣が切除可能な範囲にある場合や、患者さんの体力に余裕がある場合、状態によっては手術で取り除くことも考慮されます。 - 標的治療・免疫療法
近年は遺伝子検査の結果によって使える「標的治療薬」が見つかったり、免疫チェックポイント阻害剤などの免疫療法が適用されたりする可能性もあります。
患者さんやご家族ができること
- 専門医とじっくり相談する
原発不明がんは診断・治療ともに難しい疾患です。病理検査や遺伝子検査など、追加の検査を受けるかどうか含めて、腫瘍内科などの専門医とよく相談しましょう。 - 最新の情報をキャッチアップする
医療は日々進歩しています。特に原発不明がんはゲノム医療の発展とともに、新しい治療法が生まれる可能性がある分野です。信頼できる情報源や主治医からの情報を定期的に確認することが大切です。 - サポート体制を整える
治療には体力面だけでなく精神面のサポートも必要です。家族や友人はもちろん、患者会やカウンセリングなども活用して、一人で抱え込まずサポートを受けられる体制を作りましょう。
まとめ
原発不明がんは、がんがどこから発生したのか特定できないために、治療を決めるのが難しい病気です。ただし、最近では検査技術や治療法が進歩し、原発巣を特定できたり、患者さんそれぞれのがん細胞の特徴に合った薬を選んだりできる可能性が高まっています。
もし「原発不明がんかもしれない」と言われたら、焦らずに専門医と相談しながら、最新の知見やサポート体制を取り入れて進めていくことが大切です。自分や大切な人の身体を守るためにも、正しい情報を得て、納得のいく治療方針を一緒に考えていきましょう。
本記事は一般的な情報提供を目的としています。実際の治療にあたっては、必ず専門の医師の診断と方針に従ってください。